2017/10/29

いまチャット小説がアツい!その理由と、市場として立ち上がるための条件

Balloon掲載『俺の理性は限界突破』が好きです。画像は Appliv より

「チャットノベル」アプリ9本比較&おすすめ作品。トーク画面風の新しい小説https://mag.app-liv.jp/archive/83053

この記事、非常によくチャットノベル (以下この記事では “チャット小説”) アプリごとの特徴をおさえていて素晴らしいと思ったのですよ。
そしてちょっと前からぼく、チャット小説はマンガアプリに続いて今後のメインストリームの 1 つになるポテンシャルがあると信じているんですね。

その理由を書きます。
(ファクトというよりはオピニオンなので、やっぱり有料販売ではなく無料公開することにしました)

1. 新しいデバイス・メディアが新しいコンテンツ消費のスタイルをもたらすから


1 つ目は『歴史的に見るとそうなるよね』っていう理由です。
ヘーゲルのいう "事物の螺旋的発展の法則" っていうやつです。
(これ超役に立つ思考法なので、知らない方は読んでみてください)

映画 (街に 1 館) がテレビ (1家に1台) になって、さらにそれが 1 人 1 端末の時代になるにしたがって YouTube など新しい動画コンテンツの消費の方法が生まれ、YouTuber といわれるような (銀幕タレント → テレビタレント、と同じ流れで) 新しい種類のタレントが勃興してきているよね。

リアルな場でのオークションが、インターネットの普及にともなってヤフオクになって、”リアルタイムで売り手と買い手が交流する” というスマホならではの価値によってメルカリなどのフリマアプリになったよね。
(間にガラケーの CtoC サービスもあったね。ビッダーズ / モバオクとか)

マンガもスマホになって、Comicoに代表される “webtoon” という縦スクロール型という新しいフォーマットが生まれたよね。
上位マンガアプリのアクティブユーザー数はすでに紙のマンガ雑誌の発行数を超えていて、要するにアプリでマンガを読むというのは一般ユーザーにとって “当たり前” になってるわけです。

つまり過去の流れとしては、リアルであったサービス (第一形態) がまずインターネットで第二形態になり、(一部途中でガラケー特化という特殊形態を挟んだのちに) スマホに最適化することで第三形態になってきているわけです。

小説を読む、というのはどうか。

もともとは紙 (第一形態) だったのが、PC とインターネットの普及で web になり (第二形態)、ガラケーの普及で “ケータイ小説” という新しいフォーマットが出てきた。

読んだことある人は分かると思うけど、"ケータイ小説" はいわゆる本で読む小説とは全然違うフォーマット (改行がやたら多い、短文中心、会話が多い、横書きである、etc) ですな。
“野いちご” “魔法のiランド” といったサイトを中心に UGC 型がブームになったのも特徴で、執筆も消費もガラケーという (当時) 新しいデバイスで行われていました。

じゃあこれがスマホになって最適なフォーマットが出てきたかというと、まだ出てきていないと思うんですよ。

Kindle や Kobo で読んでるのはあくまで紙の本を前提として書かれたテキストデータをスマホで読んでいるだけ。
"ケータイ小説"はスマホでも読まれてるけど、あんな文章をいまスマホで書く人なんていない、ってことは “ガラケーっぽい” 文章しかないから仕方なくそれをスマホで読んでるだけにすぎない。

スマホユーザーが慣れ親しんだフォーマットで、それ用に作られたオリジナルコンテンツを消費する時代が近く必ずくる。
じゃあスマホユーザーが一番接しているテキストコンテンツは何かというと、チャットだと思うんだよね。
(SNS はどんどんテキストレスに振ってきているし)


...というのが 1 つ目の理由。

(なので厳密にいうと、最終的にくるのは "チャット" 形式ではないかもしれない。
 けど少なくとも、今までのデバイスではなくスマホにより特化・最適化されたフォーマットではあるはず)

2. 複数プラットフォームが乱立できるから


ネットオークションやフリマのような “ネットワーク外部性” が強烈にきくサービスは、売り手も買い手も “一番人がいるサービス” を使う経済的インセンティブが働くので、基本的には一社総取りになるじゃないですか。

一方コンテンツ産業は、もちろん人気・不人気はあれど、プラットフォームとしては複数存在し得るわけです。

ジャンプがいくら強くてもサンデーやマガジンやスピリッツを読むユーザーは (そこに面白い作品がある限り) いなくならない。

マンガアプリも、MAU 数百万レベルのものは数が限られるけど、とにかくマンガがあれば読みたいというミッドコア・コアユーザー (そう、ぼくのような) は複数アプリを併用するので、二番手・三番手グループ (MAU 数万〜数十万) が成立する。

問題になるのは「チャットスタイルで書かれた小説を読む」という習慣がユーザーに定着するかどうかで、定着したら複数プラットフォームが成り立ち、マーケットの上限はどれぐらい面白い作品が生産されるかという "供給側" の事情が決める、と思うのです。
たぶんね。

3. マネタイズできるから


チャット小説コンテンツが十分な量生産され、ユーザーもチャット小説を消費する習慣が根付いたとして、産業として大きくなるかどうかは "十分マネタイズできるかどうか"、さらにいうと "生産者側にとってコストより十分大きなリターンが得られるかどうか" が鍵になってくるわけです。

以前、ぼくとジャンプ+ (プラス) 細野編集長との対談 (https://mag.app-liv.jp/archive/82203) のなかで、「マンガアプリ発で "億" 単位で売れる作品を出したい」とおっしゃっていたのが印象的だったんですね。

細野編集長 これも画像の出典は Appliv

紙のマンガ誌は、連載単体でももちろん、その後のコミックス、アニメ化、ドラマ化、映画化、ゲーム化など “うまくいった作品のマネタイズの道” がすでに出来ている。
ヒットするのが簡単なわけではないけど、ヒットしたときにはちゃんと “ドリーム” があるから、既存の作家さんも継続するし、新規の作家さんも入ってくる。

マンガアプリについても、アプリ内課金 (作品を読むのにチケットを消費させる、作品単位で買わせる、など)、広告 (作品を読むために広告を見せる、作品の前後で動画や静止画の広告を見せる、など)、からのコミックス販売、アニメ化、映画化と徐々にマネタイズは出来てきつつある。
色々あるから詳細は端折るけど、マンガアプリが世に出てきてから、色んな会社がマネタイズは試行錯誤してきてるんだ、これが。

チャット小説は、基本的にはマンガアプリの上手くいってるマネタイズ手法をトレースすれば恐らくマネタイズ出来て (小説はマンガと同じく、元々人間がお金を払う対象だった、という事実がとても大きい)、かつコンテンツ制作についてはマンガよりも比較的ハードルとコストが低い (絵が描けなくてもいいというのがとても大きい) ので、作家さんがそれで生計を立てられるレベルにまでは到達する絵が見える。
見えるぞ。

いつか立ち上がるかもね。いつ立ち上がるの?


と、ここまで「チャット小説市場が成立しそう」な理由を書いてきたけど、本当に立ち上がるどうか、どれぐらい早く立ち上がるかは、ひとえに “ヒット作の有無” に依存していると思う。

ケータイ小説があれだけメジャーなジャンルになったのは、『Deep Love』のヒットが最初にあったからだ。(知らんけど)
その成功を見て、プロの作家から素人まで、多くの人が作り手として参加してきて、それらを読む人が集まっていった。

需要と供給でいうと、コンテンツについては常に供給がないと成り立たない世界なのである。

新しいフォーマット・新しいプラットフォームが、今後産業として伸びていくかどうか。
それは、そのフォーマット・プラットフォーム “発” の IP が生まれているかどうかで、占うことができると思う。

例えばマンガアプリでいうと、紙で流行った作品をアプリに焼き直すのではなく、アプリで人気になった作品がコミックス (紙) になって、映像化されて、という流れがすでに起きてきている。

「その作品」を読むためだけに、(高いハードルを超えて) アプリをダウンロードして読もうと思う、そんなモンスター作品が 1 つでも生まれたら、そしてその作品がきちんとマネタイズできたら。

テキストを書いて生きているプロの作家が、プロクオリティの作品を作り、課金を中心にマネタイズするプラットフォーム (のいくつか) に掲載して、それらがメインストリームになる。

んで、どこかが “成功しそうな兆し” を見せると、たとえば出版社やテレビ局など、”コンテンツの作り手” および “IP” を持っている既存のプレイヤーが、作品を掲載するプラットフォーム and/or コンテンツ提供者として参入してくるだろう。
んでそこから、チャット小説発の IP として、映像化やコミカライズといったメディアミックス展開を大人力で進めてくるだろう。

あときっと GREE, DeNA みたいな IT 業界のビッグネームもプラットフォーマーとして参入してくるんじゃないかな。
(DeNA がやるならきっと安江氏がこの事業も兼任するでしょう。(適当))
DMM が TELLER やってるのも完全にその流れ。だと思う。

セプテーニの佐藤社長がマンガを好きなのと同じぐらい、小説やテキストコンテンツが好きな経営陣がいる会社があったら、数年単位で億単位で投資して、スマホ特化した小説を専門に書く作家とプラットフォームを育成したりしてくるかもね。
Abema に何百億円も投資する CyberAgent、よりは比較的少ない投資で済みそうだし。


それほどは人気がない作家やアマチュア作家の作品も、「課金するほどではないけどチャット小説をもっとたくさん読みたい」という比較的少数のユーザー向けのアプリで、広告を中心にマネタイズされるだろう。

んでいくつかのプラットフォームが、上手にマネタイズする仕組みと、ヒット作品を継続的に生み出す仕組みを作って、新たに上場するレベルで成功する会社も 1 つ 2 つは出てきてもおかしくないかな。

ほら、なんか “ありそうな未来” でしょ?

あと足りないのは、映画化されるレベルのオリジナルヒットコンテンツですよ。

カテゴリとしては、ケータイ小説をメジャーにした『Deep Love』や、マンガアプリ発の比較的初期の IP 化コンテンツ (Comico『ReLIFE』やマンガボックス『恋と嘘』など) といった過去の事例を見るに、最初にメジャーになるのは恋愛系なのかなぁ。

集客しやすいのは (特に今の世相だと) ホラー・スリラー・サスペンスなどブラック系カテゴリか、エロ系になるんだろうけど。

最初に当てるのは誰かなぁ。
楽しみ。

最後に、実際どれかチャット小説アプリ触ってみようという方は、冒頭にもリンク載せたこちらの記事に詳しく比較してあってオススメです。アプリへのリンクもあるし。
「チャットノベル」アプリ9本比較&おすすめ作品。トーク画面風の新しい小説https://mag.app-liv.jp/archive/83053

こんなかんじで!

Q

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