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2017年12月7日木曜日

個人開発でもここまでできる!新作「Dual Match 3」開発の裏側にあった戦略思想、学習、ローカライズ

ぼく : 伊與田 (いよだ) さん、まずは新作 Dual Match 3 のリリース、および App Store フィーチャー、超おめでとうございます!!

伊與田さん (以下「いよだ」) : ありがとうございます。リリースして、実はレベルデザインどうしようかなと悩んでいたのですが、その間にフィーチャーされてしまいました。

ぼく : フィーチャー "されてしまった" なんて贅沢な(笑)。しかし、昨年 4 月以来の blog 出演ですね。お久しぶりです。

いよだ : お久しぶりになってしまいました。

ぼく : 前作って Dungeon Tiles ですよね。新作リリースはどれぐらいぶりですか?

いよだ : Dungeon Tiles が最後です。前作のリリース日が 2016 年 7 月なので約 1 年 5 ヶ月ぶりになります。ちょっと何してたんだろうって感じですね(汗)


前回のblog記事から

ぼく : ほんとですよ(笑)。何をされていたのですか?

いよだ : Dungeon Tiles の最後のアップデートが 2016 年 12 月 22 日なので、約 5 ヶ月半は前作のメンテナンスとアップデートをしていました。その後、今回の Dual Match 3 を作るためのゲームエンジンに何を使うか検討していました。

ぼく : 休養期間とかはなかったんですね。

いよだ : なかったですね。

開発ツールの変更 - Corona から Unity へ


ぼく : 今回から Corona ではなく Unity で開発されてるんですよね。なんで Unity に変えたんですか?

いよだ : 以前作った Number Balls というタイトルを Corona SDK で開発していたので、Corona SDK も検討していたんですよ。ライセンスを購入していたのですが、次第に「広告を使いたければ別のライセンスが必要」など、納得ができない条件変更が発生して、今後継続して利用するのは好ましくないと判断しました。

ぼく : なるほど。じゃあ今回、Unity の使い方もイチから身につけなきゃいけなかったんですね。

いよだ : そうなんです。2017 年から新しく Unity を使うことに決めたのですが、最初全くわからなかったので、2 ヶ月間勉強する時間を作りました。その間に Unity のマニュアルを読んだり、本を読んだり、チュートリアル動画を見たり、オブジェクト指向や C# の本を読んだりして、Dual Match 3 の設計イメージができるまでひたすらインプットをしていました。

ぼく : なるほど。以前アプリマーケティング研究所の記事にも出てましたが、おそらく金銭的にはそこまで余裕はない中...

いよだ : そうですね、Unity に変えるには学習コスト、時間がかかるので迷いましたが、運良く昨年賞金をいただいたので、Unity に変えるにはこのタイミングしかないと思い変えました。

ぼく : あ、そこで AppLovin の賞金 (※いよださんは昨年 AppLovin が主催する Apple TV アプリ開発コンテストで優勝しました) が役に立ったんですね。よかったです!Unity の勉強は大変でしたか?

いよだ : 結構苦労しました。開発や設計方法が全く異なったので、過去のコード資産や経験があまり役に立たない感じでした。普段あまり本を読まないのですが、多分 3,000 ページぐらいの本や資料を読んだと思います。

ぼく : 3,000 ページ!すごい、、、

いよだ : 残念ながら理解できてないことも多いですけど。

ぼく : で、2 ヶ月の学習期間を経て、新作の開発開始と。

いよだ : 3 月から開発を開始したのですが、初めてのゲームエンジンを利用したので知らないことだらけで大変でしたが、3 週間ほどでプロトタイプを作り、その後デザインの変更、機能追加、品質を上げる作業をしていました。全部で約 9 ヶ月間ぐらい費やしたことになります。

新作「Dual Match 3」とは?


ぼく : そうして作った新作、紹介をお願いします。

いよだ : アプリ名は「デュアルマッチ3 - Dual Match 3 -」といいます。2017 年 12 月 6 日にリリースしました。


デュアルマッチ3 - Dual Match 3 -
iTunes: https://itunes.apple.com/jp/app/id1235387591?mt=8
Webサイト: http://jp.i-yoda.com/press/dual_match3/

ぼく : 名前の通り Match3 (3 つ以上同じ要素をつなげるとブロック等が消えるパズルゲーム) ですね。

いよだ : そうですね。「同じ色のボールを 3 つ以上連続でつなげる」という単純なルールのマッチ 3 ゲームですが、斜め方向につなげることができるので、より多くのルートが作れます。つなぐ順番次第で得点が変化するため、上達するとスコアが大きく伸びます。決められた移動回数内で、全ての色の目標値が 0 になるとレベルアップします。

ぼく : 得点が変化するとは?

いよだ : 同じ色のボールを 3 つ以上つなげると数字の合計値がポイントになるのですが、同じ色で同じ数字を3つ以上つなげるとコンボとなりポイントが 10 倍になります。さらにコンボの数がポイントに乗算されます。


ぼく : なるほど。単純作業ではなく考えないといけないので、飽きずに継続して遊べそうですね。

いよだ : はい。また飽きないための工夫として、今説明したノーマルモードだけでなく、ハードモードも用意しました。

ぼく : え、それ僕やったことない。
(※注 : ぼくβテストに参加していたので、ノーマルモードはリリース前からプレイしていました)

いよだ : ハードモードは、基本ルールはノーマルモードと同じですが、同じ色のボールを 3 つ以上つなげるとポイントの合計値の “キューブ” が発生し、同じ色のキューブを 3 つ以上つなげるとキューブを消すことができます。


ぼく : 消えるまでにワンステップ増えるんですね。

いよだ : はい、キューブが邪魔になるので難しくなりますがキューブを消すと高得点を得ることができます。

ぼく : なるほど、やってみたいな。他にも工夫したポイントはありますか?

いよだ : ゲームの進行を助けるアイテムを 3 つ用意しました。ゲーム終了後にもらえるコインを消費して使うことができます。他には、リプレイ動画やベストムーブを SNS でシェアできたり、色が識別できない方のための色覚サポート機能があったり、カラーテーマが 3 つの中から選べたりといった機能を用意しました。

ぼく : 色覚サポート機能って初めて聞きました。優しいですね。マネタイズは広告だけですか?

いよだ : アプリ内課金もあります。広告削除と、ゲーム終了後に取得するコインが2倍になる特典を課金で売っています。

カジュアルゲームで世界を獲るには?成功例の分析


ぼく : プレイモードを2つ作るとか、課金を入れるとか、非言語で直感的に理解させるデザインとか、個人的にはとても好みだし世界を狙えるポテンシャルあると思っています。打ち手としてとても正しいですよね。やっぱ世界とりたいという思いがあるんでしょうか?

いよだ : 開発を始めた頃から米国をターゲットとして始めました。日本では、ソーシャルゲームが強く、個人開発では作家性が強いものが好まれているような気がします。

ぼく : 確かに、開発者さんの「色」が強いゲームのほうが受けている印象はあります。

いよだ : 私が開発できるゲームはそのような分野が苦手なので、欧米をターゲットとしています。ヒットさせるのは難しいですが、欧米の方がシンプルなゲームでもヒットしています。最近だと Voodoo、ここ 2~3 年では KetchappGram GamesBitMango など、シンプルなゲームでもランキングに常に入っていて、レビューもそれほど悪くないカジュアルゲームがたくさんあります。

ぼく : そのへんは AppLovin でも広告売上上位の常連ですね。

いよだ : ゲームのクオリティ的には個人開発でも可能性があると思うので、それ以外のヒットさせるための施策をどうするかが課題だと思っています。成功の事例も多いのでその辺りを分析すれば確率を上げることはできると思います。

ぼく : どのへんがポイントだと分析されたんですか?

いよだ : シンプルなルールとデザイン、非言語化、10 言語以上のローカライズ、広告+課金、複数のプレイモードは、上記パブリッシャーで共通していることですし、コストもあまりかからず実現可能な要素だと思います。できれば、世界中のユーザーに遊んでいただけるとうれしいです。

ぼく : 的確な分析だと思います。

意外とお金かかってない!?多国語ローカライズの工夫


ぼく : 言語は何ヶ国語に対応されたんですか?

いよだ : 英語、日本語、韓国語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、中国語(簡体字、繁体字)、アラビア語です。12 言語ですね。

ぼく : うげぇ、すごい。。。翻訳はどうやったんですか?こんなにたくさんの言語に...。お金もけっこうかかったんじゃないですか?

いよだ :  時間の余裕がなかったですが、ローカライズはどうしてもやりたかったので試してみました。まず英語への翻訳を知り合いのイギリス人の翻訳者の方に頼んで約 ¥10,000。そのあと OneSky っていう多分香港のクラウドソーシング的なローカライズ会社に翻訳をお願いして、¥60,000 ぐらいでした。なので、合計 ¥70,000 ぐらいだと思います。

ぼく : え、意外と安い。1 言語 10,000 円もかかってないじゃないですか。

いよだ : 韓国語は素晴らしい韓国語のローカライズをしている方にしていただけました (※ぼくも知ってる方ですが、まじで素晴らしい方です)。英語の翻訳はプレスリリースの翻訳も含まれています。実際の翻訳文書以外に、用語集・スクリーンショット・スタイルガイド・翻訳してもらう言葉の説明などを求められることがあるので、早めに対応した方が良いと思います。あと各言語ごとの翻訳者から結構質問が来る可能性があります。

ぼく : 翻訳者とのやりとりは日本語ですか?

いよだ : 全て英語でのやりとりになるので、全く英語がわからないっていう感じだとちょっと難しいかもしれません。

ぼく : 貴重な tips ですね。素晴らしい工夫だと思います!

いよだ : 依頼する前に、ローカライズのためのガイド本 (50 ページぐらい) を読んで勉強しました。

Dual Match 3 開発の背景


ぼく : しかし Match3 とは、えらく競争激しそうな領域ですね(笑)。

いよだ : 確かに競争激しいと思います。どこかのサイトで App Store だけでも Match 3 は 2,200 アプリ以上あるって書いてありました(汗)。

ぼく : それはやばい(笑)。しかも大手も多いですよね。King とか、最近だと PlayrixGardenScapes, HomeScapes とか。

いよだ : はい。ただ多くの Match 3は、Candy Crush のような “課金ベース” で “ステージクリア” のパズルだと思います。”広告主体” であったり “ハイスコアを目指す” タイプのカジュアルゲームはあまり記憶がないです。

ぼく : 確かに。そういう意味だとオリジナリティは出せると踏んだわけですね。

いよだ : ただ Match 3 は、”詰んでいるかどうか” の状態を検知するときやゲームバランスの調整に “再帰処理を用いた探索アルゴリズム” が必要になるので、Threes!2048 のようなパズルゲームと比べて開発コストは高いと思います。

ぼく : そんななか、どうしてこのゲームを作ろうと思ったのですか?

いよだ : 2014 年 1 月に同じような “Number Balls” というマッチ 3 パズルをリリースしたのですが、全くダウンロードされませんでした。しかし、周りの評判は結構よかったんですよね。なので、ルール・デザイン・アルゴリズムなどを全て作り直して、よりシンプルなパズルゲームとして開発しました。

ぼく : 原型がもともとあったんですね。デザインとかはどう変えられたんですか?

いよだ : 最初は “Dots” を意識していたのですが、3D で作ることにしたので、特に他のアプリを参考にせずに、良いと思える品質まで何度も変更しました。デュアルマッチ 3 という “ゲーム性” がアピールしたいポイントなので、好きなデザインを選べるようにテーマを用意しました。

ぼく : なるほど。ある意味、参考にするものがない状態って、イチから作る苦しみとかありますよね。

いよだ : そうですね。今までは 2D だったのでイラストレーターで画像を作ればよかったのですが、3D で開発したので思ったような色や質感が出なかったりと苦労しました。

今風!AI (人工知能) を使ったゲームバランス調整


ぼく : デザインのところはどれぐらい内製で、どれぐらい外部に投げてるんですか?

いよだ : エフェクトだけ、Unity の Asset Store で購入したものをカスタマイズして使っていますが、それ以外は内製です。といっても、ボールとキューブは Unity に初めから用意されているものに色の設定をし、購入したアセットのノーマルマップを適当に利用した感じなので、自分で 3D のモデリングとかはしていないです。

ぼく : そうなんですね。あと、開発中 Facebook で post されてましたが、ゲームバランス調整で AI にプレイさせてたじゃないですか。

いよだ : はい、やってました。これとかですね。

ぼく : あれはどうやって作ったんですか?内製ですか?そういうツール・サービスがあるんですか?

いよだ : 内製です。ヒント表示用に、経路検索のアルゴリズムと、ボールをつないだラインをアニメーションで表示する部分は開発していたんですよ。それを自動で動かして、ゲームオーバーしたら自動でリトライするように作っています。

ぼく : あー、なるほど。どれぐらい賢いんですか?

いよだ : 単純に経路検索をして得点が高いと思う経路を選択しているだけで、先読みはしていないため、人よりは賢くないと思います。先読みをすると計算量が多すぎて厳しいです。ただ、ゲームバランスのために利用するには、一定のアルゴリズムで動作するメリットもあると思います。

ぼく : それはどういう点ですか?

いよだ : パラメーターを変更した時に、クリア率やコンボ率がどのように変化するか?など数値である程度判断することができます。

ぼく : なるほどねぇ。人間にプレイさせると、けっこう数こなさないと統計的に正しいかどうか判断できないですもんね。

いよだ : そのあたり、数値では直感的にわかりにくいところは、Web でレポートをグラフで表示できるように開発しました。これも内製です。





ぼく : すげぇ...。毎回話聞いて思うんですが、個人でやってるとは思えない開発プロセスの洗練度合いですね。

最後に


ぼく : ズバリこのアプリの手応えは?どれぐらい狙っていますか?

いよだ : 予測は難しいですね。理想は、30 万 DL とか欲しいですが、アップルにフィーチャーされないと現実は、数千 DL ぐらいだと思います。フィーチャーされても DL 数が伸びるかどうはわからないので運次第って感じです。収益性は常に課題ですが、今回も低いと思います。パズルで非消費アイテムをたくさん活用できる案があると良いのですが。。。

ぼく : いやでも僕自身触っててかなり品質高いと思うので、フィーチャーもですが、アプリ自体の継続率や収益性をもっと高めて、プロモーションとかにもチャレンジしたいですね。本日はどうもありがとうございました!

Q

2017年12月3日日曜日

開発したアプリ「漫画ウォッチャー」を譲渡しました

先日プレスリリースが出ていた通り、ぼくが開発して夏にリリースしたアプリ「漫画ウォッチャー」を譲渡 (売却) しました。


先に言っておくと、某 CASH と違って、まったく金持ちにはなっていません。。。
NDA があるので細かいことはお話できないですが、かけてきた労力考えるとまったく割に合わない仕事 (金銭的には) です。。。
70 億円とか桁がいくつ違う世界やねん。。。

ただ、個人的にこの一連の経験から得られるものは色々ありました。

自分でサービスを企画して、外部のリソース (エンジニア、デザイナー) を借りてプロダクトを作り、世に出すまでの大変さ。

リリース時のだいぶふざけたプレスリリース、めっちゃ buzz って、PR Times 上では「お金のデザイン」社が 5億円調達したというニュースに (瞬間風速で) 勝ったりして、ちょっと深まった自信と期待。


からの、全然思っていたほどダウンロードが伸びず、不労所得の期待も夏の幻に。

追加したい機能や、今後こんなアプリに変えていきたいという思いはあれど、いかんせん子持ちサラリーマンの資金的限界。
(これからサービスリリースされる方は、どうかどうか、リリース後のメンテやアップデートのことも視野に入れておいてください。苦笑)

そこに差し伸べられた救いの手...なのかどうか最初は分からなかったけど、とにかく事業譲渡という初めての出来事。

半年で (きちんとサラリーマンやりながら笑) これだけ経験できたことは、ちっともお金にはならなかったけど、少なくとも自分の経験値と話題にはなったかなと思うので、ポジティブに捉えています。

他にも作ってみたいサービスやゲームはいくつかあるので、趣味的にでもぼくと一緒にやってみたい方はぜひ気軽にご連絡ください!
Twitter @tatsuosakamoto

あと、本件に関してでもそれ以外でも、質問ある方は https://tatsuojapan.sarahah.com/ こちらで受け付けてます!

Q

2017年10月29日日曜日

いまチャット小説がアツい!その理由と、市場として立ち上がるための条件

Balloon掲載『俺の理性は限界突破』が好きです。画像は Appliv より

「チャットノベル」アプリ9本比較&おすすめ作品。トーク画面風の新しい小説https://mag.app-liv.jp/archive/83053

この記事、非常によくチャットノベル (以下この記事では “チャット小説”) アプリごとの特徴をおさえていて素晴らしいと思ったのですよ。
そしてちょっと前からぼく、チャット小説はマンガアプリに続いて今後のメインストリームの 1 つになるポテンシャルがあると信じているんですね。

その理由を書きます。
(ファクトというよりはオピニオンなので、やっぱり有料販売ではなく無料公開することにしました)

1. 新しいデバイス・メディアが新しいコンテンツ消費のスタイルをもたらすから


1 つ目は『歴史的に見るとそうなるよね』っていう理由です。
ヘーゲルのいう "事物の螺旋的発展の法則" っていうやつです。
(これ超役に立つ思考法なので、知らない方は読んでみてください)

映画 (街に 1 館) がテレビ (1家に1台) になって、さらにそれが 1 人 1 端末の時代になるにしたがって YouTube など新しい動画コンテンツの消費の方法が生まれ、YouTuber といわれるような (銀幕タレント → テレビタレント、と同じ流れで) 新しい種類のタレントが勃興してきているよね。

リアルな場でのオークションが、インターネットの普及にともなってヤフオクになって、”リアルタイムで売り手と買い手が交流する” というスマホならではの価値によってメルカリなどのフリマアプリになったよね。
(間にガラケーの CtoC サービスもあったね。ビッダーズ / モバオクとか)

マンガもスマホになって、Comicoに代表される “webtoon” という縦スクロール型という新しいフォーマットが生まれたよね。
上位マンガアプリのアクティブユーザー数はすでに紙のマンガ雑誌の発行数を超えていて、要するにアプリでマンガを読むというのは一般ユーザーにとって “当たり前” になってるわけです。

つまり過去の流れとしては、リアルであったサービス (第一形態) がまずインターネットで第二形態になり、(一部途中でガラケー特化という特殊形態を挟んだのちに) スマホに最適化することで第三形態になってきているわけです。

小説を読む、というのはどうか。

もともとは紙 (第一形態) だったのが、PC とインターネットの普及で web になり (第二形態)、ガラケーの普及で “ケータイ小説” という新しいフォーマットが出てきた。

読んだことある人は分かると思うけど、"ケータイ小説" はいわゆる本で読む小説とは全然違うフォーマット (改行がやたら多い、短文中心、会話が多い、横書きである、etc) ですな。
“野いちご” “魔法のiランド” といったサイトを中心に UGC 型がブームになったのも特徴で、執筆も消費もガラケーという (当時) 新しいデバイスで行われていました。

じゃあこれがスマホになって最適なフォーマットが出てきたかというと、まだ出てきていないと思うんですよ。

Kindle や Kobo で読んでるのはあくまで紙の本を前提として書かれたテキストデータをスマホで読んでいるだけ。
"ケータイ小説"はスマホでも読まれてるけど、あんな文章をいまスマホで書く人なんていない、ってことは “ガラケーっぽい” 文章しかないから仕方なくそれをスマホで読んでるだけにすぎない。

スマホユーザーが慣れ親しんだフォーマットで、それ用に作られたオリジナルコンテンツを消費する時代が近く必ずくる。
じゃあスマホユーザーが一番接しているテキストコンテンツは何かというと、チャットだと思うんだよね。
(SNS はどんどんテキストレスに振ってきているし)


...というのが 1 つ目の理由。

(なので厳密にいうと、最終的にくるのは "チャット" 形式ではないかもしれない。
 けど少なくとも、今までのデバイスではなくスマホにより特化・最適化されたフォーマットではあるはず)

2. 複数プラットフォームが乱立できるから


ネットオークションやフリマのような “ネットワーク外部性” が強烈にきくサービスは、売り手も買い手も “一番人がいるサービス” を使う経済的インセンティブが働くので、基本的には一社総取りになるじゃないですか。

一方コンテンツ産業は、もちろん人気・不人気はあれど、プラットフォームとしては複数存在し得るわけです。

ジャンプがいくら強くてもサンデーやマガジンやスピリッツを読むユーザーは (そこに面白い作品がある限り) いなくならない。

マンガアプリも、MAU 数百万レベルのものは数が限られるけど、とにかくマンガがあれば読みたいというミッドコア・コアユーザー (そう、ぼくのような) は複数アプリを併用するので、二番手・三番手グループ (MAU 数万〜数十万) が成立する。

問題になるのは「チャットスタイルで書かれた小説を読む」という習慣がユーザーに定着するかどうかで、定着したら複数プラットフォームが成り立ち、マーケットの上限はどれぐらい面白い作品が生産されるかという "供給側" の事情が決める、と思うのです。
たぶんね。

3. マネタイズできるから


チャット小説コンテンツが十分な量生産され、ユーザーもチャット小説を消費する習慣が根付いたとして、産業として大きくなるかどうかは "十分マネタイズできるかどうか"、さらにいうと "生産者側にとってコストより十分大きなリターンが得られるかどうか" が鍵になってくるわけです。

以前、ぼくとジャンプ+ (プラス) 細野編集長との対談 (https://mag.app-liv.jp/archive/82203) のなかで、「マンガアプリ発で "億" 単位で売れる作品を出したい」とおっしゃっていたのが印象的だったんですね。

細野編集長 これも画像の出典は Appliv

紙のマンガ誌は、連載単体でももちろん、その後のコミックス、アニメ化、ドラマ化、映画化、ゲーム化など “うまくいった作品のマネタイズの道” がすでに出来ている。
ヒットするのが簡単なわけではないけど、ヒットしたときにはちゃんと “ドリーム” があるから、既存の作家さんも継続するし、新規の作家さんも入ってくる。

マンガアプリについても、アプリ内課金 (作品を読むのにチケットを消費させる、作品単位で買わせる、など)、広告 (作品を読むために広告を見せる、作品の前後で動画や静止画の広告を見せる、など)、からのコミックス販売、アニメ化、映画化と徐々にマネタイズは出来てきつつある。
色々あるから詳細は端折るけど、マンガアプリが世に出てきてから、色んな会社がマネタイズは試行錯誤してきてるんだ、これが。

チャット小説は、基本的にはマンガアプリの上手くいってるマネタイズ手法をトレースすれば恐らくマネタイズ出来て (小説はマンガと同じく、元々人間がお金を払う対象だった、という事実がとても大きい)、かつコンテンツ制作についてはマンガよりも比較的ハードルとコストが低い (絵が描けなくてもいいというのがとても大きい) ので、作家さんがそれで生計を立てられるレベルにまでは到達する絵が見える。
見えるぞ。

いつか立ち上がるかもね。いつ立ち上がるの?


と、ここまで「チャット小説市場が成立しそう」な理由を書いてきたけど、本当に立ち上がるどうか、どれぐらい早く立ち上がるかは、ひとえに “ヒット作の有無” に依存していると思う。

ケータイ小説があれだけメジャーなジャンルになったのは、『Deep Love』のヒットが最初にあったからだ。(知らんけど)
その成功を見て、プロの作家から素人まで、多くの人が作り手として参加してきて、それらを読む人が集まっていった。

需要と供給でいうと、コンテンツについては常に供給がないと成り立たない世界なのである。

新しいフォーマット・新しいプラットフォームが、今後産業として伸びていくかどうか。
それは、そのフォーマット・プラットフォーム “発” の IP が生まれているかどうかで、占うことができると思う。

例えばマンガアプリでいうと、紙で流行った作品をアプリに焼き直すのではなく、アプリで人気になった作品がコミックス (紙) になって、映像化されて、という流れがすでに起きてきている。

「その作品」を読むためだけに、(高いハードルを超えて) アプリをダウンロードして読もうと思う、そんなモンスター作品が 1 つでも生まれたら、そしてその作品がきちんとマネタイズできたら。

テキストを書いて生きているプロの作家が、プロクオリティの作品を作り、課金を中心にマネタイズするプラットフォーム (のいくつか) に掲載して、それらがメインストリームになる。

んで、どこかが “成功しそうな兆し” を見せると、たとえば出版社やテレビ局など、”コンテンツの作り手” および “IP” を持っている既存のプレイヤーが、作品を掲載するプラットフォーム and/or コンテンツ提供者として参入してくるだろう。
んでそこから、チャット小説発の IP として、映像化やコミカライズといったメディアミックス展開を大人力で進めてくるだろう。

あときっと GREE, DeNA みたいな IT 業界のビッグネームもプラットフォーマーとして参入してくるんじゃないかな。
(DeNA がやるならきっと安江氏がこの事業も兼任するでしょう。(適当))
DMM が TELLER やってるのも完全にその流れ。だと思う。

セプテーニの佐藤社長がマンガを好きなのと同じぐらい、小説やテキストコンテンツが好きな経営陣がいる会社があったら、数年単位で億単位で投資して、スマホ特化した小説を専門に書く作家とプラットフォームを育成したりしてくるかもね。
Abema に何百億円も投資する CyberAgent、よりは比較的少ない投資で済みそうだし。


それほどは人気がない作家やアマチュア作家の作品も、「課金するほどではないけどチャット小説をもっとたくさん読みたい」という比較的少数のユーザー向けのアプリで、広告を中心にマネタイズされるだろう。

んでいくつかのプラットフォームが、上手にマネタイズする仕組みと、ヒット作品を継続的に生み出す仕組みを作って、新たに上場するレベルで成功する会社も 1 つ 2 つは出てきてもおかしくないかな。

ほら、なんか “ありそうな未来” でしょ?

あと足りないのは、映画化されるレベルのオリジナルヒットコンテンツですよ。

カテゴリとしては、ケータイ小説をメジャーにした『Deep Love』や、マンガアプリ発の比較的初期の IP 化コンテンツ (Comico『ReLIFE』やマンガボックス『恋と嘘』など) といった過去の事例を見るに、最初にメジャーになるのは恋愛系なのかなぁ。

集客しやすいのは (特に今の世相だと) ホラー・スリラー・サスペンスなどブラック系カテゴリか、エロ系になるんだろうけど。

最初に当てるのは誰かなぁ。
楽しみ。

最後に、実際どれかチャット小説アプリ触ってみようという方は、冒頭にもリンク載せたこちらの記事に詳しく比較してあってオススメです。アプリへのリンクもあるし。
「チャットノベル」アプリ9本比較&おすすめ作品。トーク画面風の新しい小説https://mag.app-liv.jp/archive/83053

こんなかんじで!

Q