2018/12/20

株式投資型クラウドファンディング”で資金調達した直後の社長を掘り下げてみた!

ぼく:今日は時間とってくれてありがとうね!まずは簡単に自己紹介をお願いします。

鎌形 諭 (以下「鎌形」):プラネティアという会社の代表をしている鎌形 諭 (かまがた さとし) といいます。2016 年に今の会社を共同創業したのですが、その前は楽天、Google で坂本さんの後輩でした。


ぼく:今は鎌形くんのほうが起業家の先輩やな!

鎌形:いやいや!

ぼく:楽天・Google 出身者らしく、マーケティング系の事業をやってるんやんね?

鎌形:はい、ASEAN 市場で、多言語の化粧品口コミプラットフォーム「COSMERIA (コスメリア)」というサービスを運営しています。そちらを通じて、日本国内の化粧品メーカーに対してマーケティング支援を行なっています。

ぼく:明らかに市場ポテンシャル大きそう...!で、そのサービスでこないだ「株式投資型クラウドファンディング」で資金調達したんやんね。

“株式投資型クラウドファンディング” についての詳しい説明は当 blog では割愛。このへんの記事 が詳しそうです

鎌形:はい。10 月に無事に 2,500 万円を調達しました

ぼく:改めておめでとう!

 
プロジェクトページ

ぼく:いちおう Facebook では post したけど...正直そこから投資につながったかっていうと、なんも貢献できなかったんじゃないかって思ってるんよね。(苦笑)


鎌形:いえ、応援してくださっただけでありがたかったです!どのみち、あのタイミングで告知しても、新しい投資家は増えないと思っていましたし。

ぼく:どういうこと?

鎌形:ぼくが調達したのはファンディーノというサイトだったんですが、投資家として登録する手続きのなかに郵便受取りによる本人確認というプロセスがあるんです。サイトで告知開始したのが金曜日で、投資の申込みが可能だったのが日曜日の夜から 24 時間だったので、金曜日に告知を見てから初めて投資したいと思っても、現実として登録が絶対に終わらなかったんですよね。

ぼく:ものすごい短期集中。。ファンディーノって 24 時間しか投資の受付け出来ないの?

鎌形:そういうわけじゃないんですが、今までファンディーノでは 50 案件ぐらいやっていて、どの案件も集まった資金はだいたい最初の 1 日で集まっていたそうなんです。そこから 1~2 週間開けといてもあんまり集まる金額は変わらないっていう傾向があるらしくて。

ぼく:そうなんや。でも投資する側からすると、案件の中身を吟味したり、鎌形くんとか経営陣のバックグラウンドチェックしたり、要するに「サイトに載ってない情報」を集めて精査しようとすると、24 時間じゃ足りなくない?

鎌形:足りないですね。告知の段階で初めてサービスに興味を持っても、今回ぐらい時間がないと、遅いですよね。あとは web サービスのマーケティングをやってた立場からしても、せめて投資可能になる 1 週間ぐらい前には告知したかったところです。

ぼく:そういう事前告知ってのはしちゃダメだったの?

鎌形:ダメじゃないんですけど、ファンディーノ側の審査を Cosmeria が通ったのが、ほんとに直前だったんですよ。3 段階ぐらい「案件化していいかどうか」って審査があったんですが、最終審査で OK が出た翌日とか翌々日にあのページがオープンして、っていうぐらいのスピード感でした。

ぼく:なんでそんな急いだの?w ファンディーノ側?

鎌形:どちらかというとそうですね。実は、僕らの前の 2~3 案件ぐらいが、連続で「不成立」だったんですよ。


ぼく:不成立ってこともあるのね。

鎌形:あるんですよ。今まで 50 案件中 10 個ぐらい、主に金額が目標に達しないという理由で不成立になっていて。

ぼく:だいたいみんなどれぐらいの金額目指してるの?3,000 万円ぐらい?

鎌形:最低金額と上限金額を自分で決められるようになっています。だいたい 3,000 万円から、多くて 6,000~7,000 万円を目標にしている案件が多いですね。

ぼく:なるほど。Valuation も自分で決められるの?

鎌形:ファンディーノの場合は審査の過程で会計士も入って、彼ら (ファンディーノ) の側が Valuation を決めるんですよ。うちの場合は 2 億円でした。

ぼく:いくら調達したんだっけ?

鎌形:上限 2,500 万円にして、満額で達成しました。post value が 2.25 億円になるので、約 11% ぐらい放出したことになりますね。

ぼく:なるほどね。売上・利益とか KPI を知らない上でだけど、そんなに違和感ある数字じゃないね。Valuation はこっちから希望を出すことは出来るの?

鎌形:希望は出せます。うちも最初は 3~5 億円って言ってました。先方から Valuation を提示された時点で、「じゃあやめます」と言うことも可能ではありました。

ぼく:面白いね。向こうからしてみたら、あまり Valuation を上げすぎると投資が集まりづらくなるし、かといって下げすぎると「他のプラットフォームで調達します」って逃げられてしまうし、っていう難しい力学が働いてる。

鎌形:そうですね。彼らは VC と違って、成約したときの手数料収入なので、案件を成立させよう、つまり資金調達を成功させようという努力はしてくれるんです。


ぼく:手数料いくらなんだっけ?

鎌形:集めた金額の 20% ですね。2 回目以降からは 15% になります。過去に 2~3 社ほどは「おかわり」調達をしているみたいです。

ぼく:今回だと 2,500 万円調達したうちの手数料が 500 万円か。けっこうな金額だね。

鎌形:でもその前まで不成立が続いていて、不成立だとファンディーノは売上ゼロなので、けっこう頑張ってくれたのかなって思ってます。

ぼく:プラットフォームとして頑張るって言うと、要するに集客の部分?

鎌形:集客ももちろんですがそれに加えて、うちの事業に対して、どう事業計画作ったらより魅力的に投資家に対して映るか、公認会計士が外部から入って一緒に考えてくれて。この先 5 年の事業計画を、PL・BS・キャッシュフローベースで作ってくれたんですよ。

ぼく:それはすごいな...めっちゃリソースかかってる。

鎌形:僕らのほうで作ってたのって、売上と、だいたいのコストぐらいの計画。それを決算書に落とす項目まで一緒に作ってくれるのが、審査プロセスの一部だったんですよ。

ぼく:そのプロセスを経た上で、「いやこれ現実的に無理あるね」ってなったら落とされることもあるし、「この数字だと Valuation これぐらいが妥当だよね」っていうふうに決まると。

鎌形:そうですそうです。非現実的な成長ラインとか引いてるとちゃんとハネてくれるし。そういう意味でも良かったですね。


ぼく:経緯としては鎌形くんがファンディーノに持ち込んだわけだよね?

鎌形:そうです。最初はセミナーですね。そのときちょうど VC とかとも話してて。3,000 万円ぐらい調達したいなと思ってたときで。

ぼく:それまでって調達はしてなかったの?

鎌形:共同創業者がいるんですが、全員で最初に出した合計 1,000 万だけでやってました。創業から 2 年半ぐらい経って、ある程度マネタイズの道が見えたので、じゃあちゃんとここに投資しようというのを決めたんですね。そうなったときにある程度資金があったほうがいいなっていうのが、今年 (2018 年) の夏ぐらいだったんです。

ぼく:なるほど、それで VC 回ったりしてたんだ。

鎌形:ですです。で、ちょっと毛色違うけども、ファンディーノのセミナーがあって行ったら仕組みが面白そうだなと。そこで会った案件の営業担当の方が、元証券会社の人だったんですが、強めに勧めてくださって。

ぼく:なにがそんなに彼女に気に入られたんだろう。

鎌形:それまではファンディーノって、ロボットとか IoT とかヘルスケアとかそういう領域が多かったみたいなんですよ。僕たちみたいなマーケティング系はあんまりなくて。なので面白がってくれて、「1 回、審査のプロセス入ってみましょうか」みたいな感じで始まり、僕たちも「どういう評価受けんのかな?」っていうレベルで、スタートしました。そうしたらトントン拍子に進んでいって。

ぼく:なるほどね〜。ファンディーノ以外の他のプラットフォームも話は聞いた?

鎌形:話してないです。調べはしましたけど。例えばエメラダ (エメラダ・エクイティ) は、VC か特定のエンジェルが入ってる、っていうことが条件だったんですよね。


ぼく:あー。どこかで一回お墨付きをもらった案件をやるみたいなイメージだ。

鎌形:なんですかね。あと Go Angel は案件をいくつか見たら、金額が小さかったんですよね。300 万円とか。どっちかと言うと一般のクラウドファンディングの、「お金集まったらTシャツあげます」ぐらいな感じにぼくらからは見えたので、ちょっと違うかなと。

ぼく:株式型クラウドファンディングでもそれぐらいの規模のところもあるのね。エメラダも確か数千万円規模って聞いてるから、ちょっと意外だ。あと何かファンディーノでやって良かったこととかあった?

鎌形:募集ページとかすごい気合い入れて作ってくれました。

ぼく:え、あれファンディーノが作ったんだ。ヒアリングみたいなのを事前に受けて?

鎌形:そうですね。2 時間ぐらいインタビューして。

ぼく:2 時間はけっこうなボリュームだね。

鎌形:はい。そしてそのページが後々まで残るってことも、サービスとして良いなと思いました。


ぼく:確かにね。ファンディーノとの話が進んでる過程では、VC からの調達とかっていうのも可能性としてはまだ残ってたの?

鎌形:話してたんですけど、まだうちのフェーズがちょっと早かったのかなと。やっとサービスの方向性っていうのが見えてきたぐらいなので、VC としてはあんまり魅力的に見ていただけなかったのかな、というのが実際あって。

ぼく:まだ「ここに突っ込めば絶対伸びる」っていういわゆる PMF (Product Market Fit) まで見つかってるわけではないけど、Valuation は数億円、調達金額も何千万とかだと、ちょっと高いかなみたいな。

鎌形:そんなかんじですね。逆によりレイターの VC からすると小さすぎるみたいな。

ぼく:まさに pre-Series A で投資してくれるプレーヤーが少ないよねっていう話を、仲いい友だちのユニバーサルバンクの鳥居さんと最近したんだよね。彼らも最近、株式型クラウドファンディングのサービス「Angelbank」を新しく発表したところで。

鎌形:僕たちが探してた頃にはまだ立ち上がってなかったんですね。

ぼく:そうそう。ユニバーサルバンクが株式型クラウドファンディングをやりたい理由がまさにそこで、シードとかはわりとシード VC とかエンジェルとかがいます、Series A で数千万から 1 億円単位で出す VC もあるけど、その “間” がプレーヤーが少ないって問題意識があるらしいんよ。エンジェルやシード VC からすると「ちょっと Valuation 高いな」ってなるし、A 以降の VC からすると「ちょっと小っちゃいな」ってなるし。でもそのタイミングでの資金調達もけっこう必要やったりするやん。

鎌形:うちはまさにそこだったかもしれないです。大きく 1 段上る前に、間でもう 1 段小さいステップが欲しいよね、みたいな。

ぼく:話題の XTech も参入するらしいし、この領域狙うプレイヤーはこれからもう少し増えるかも。


鎌形:あともう 1 個あったのが、VC との付き合い方があんまりわかんなかったんですよね。いろんなところと話したんですけど。

ぼく:ほう...どんな風に?

鎌形:僕としては、せっかくならいろいろ相談しながらやりたいなと思ったんです。「お金だけ出してください」ではなく、特に今の段階だったら、もうちょっと事業の内容に関しても一緒に考えて欲しいというか。

ぼく:壁打ちできるような?

鎌形:そうです。なのでマーケティング系とか e コマース系といった領域の出身の方がいると、もうちょっと VC からの調達に傾いてたかもしれないです。彼らの見てる領域が僕らの事業とちょっと違ったってのもあるかもしれないですが、なんかあんまり向こうもピンと来なかったし、僕もピンと来なくて。

ぼく:なるほどね。まぁ基本的には業種としては金融屋さんだし、マーケだったりだとかテクニカルなところに行けば行くほど、経験者が VC の中にもたくさんいるわけじゃないし。そういうの全部含めて「ここと一緒にやりたいな」っていう VC が見つからなかったかんじか。

鎌形:もちろん出会わなかっただけかもしれないですけどね。回った数も少ないので。


ぼく:それではここで、たつおフレンズからの質問コーナーいってみましょう〜

鎌形:Facebook で質問募集していただいてましたね。ありがとうございます。笑

ぼく:まず一番多かったのが「クラウドファンディングで資金調達すると、そのあと Series A 以降のエクイティファイナンスにネガティブな影響があるんじゃないのか?」というもの。クラウドファンディングに限らずだけど、エンジェルの投資家があまりにもたくさん株主にいると、次のラウンドの VC から嫌な顔されたり、っていうのは聞く話ではあるよね。

鎌形:そうですね。エメラダ・エクイティは新株予約権ですが、私がやったファンディーノは普通株なので、今回だと 168 名の株主が増えたことになります。

ぼく:うはww

鎌形:これでも少ないほうなんですよ。調達した 2,500 万円というのが小規模なほうなので。

ぼく:ふえええ。


鎌形:クラウドファンディングの場合、法律で、1 人が同じ会社に 1 年間に投資できる金額が 50 万円までって決まってるんですね。ぼくらの場合、168 人で 2,500 万円なので、1 人平均だと 15 万円なんですよ。10 万円、20 万円、50 万円のコースを用意したんですが、ほとんどの人が 10 万円を選択していました

ぼく:そうなんや〜。そのコースの金額ってのはどの案件も同じなん?

鎌形:3 つコースを用意するっていうのは決まってます。あとは調達金額と株数がちゃんと割り切れるようになっていれば。でも、だいたい似たかんじの設定が多いですね。

ぼく:それだけ株主の数が多くなると、手続きだけでも相当大変そうだけど。

鎌形:そこは幸いにもファンディーノがいろいろやってくれてます。いわゆる電子で公募するっていうのをちゃんと資格取っているので、ハンコが省略されたりとか結構プロセスは簡略化されています。株主総会も、IR ジャパンっていう IR の業務を外注できる会社を月 1 万円とかで使えて、そこが株主への招待の通知とか委任決議の回収とか全部やってくれるんです。

ぼく:そんな会社があるのね...!月 1 万円で 168 人分やってくれるなら、相当楽だね。

鎌形:もちろん実費は発生します、切手代とか。でも実費以外のオペレーション代のところはやってくれれます。ファンディーノと IR ジャパンが提携してるらしく、もしかするとファンディーノが一部費用を僕たちの代わりに払ってたり、とかいうのはあるかもしれないですね。

ぼく:20% の手数料の中に含まれてる可能性もあるかもしれないってことね。

鎌形:まだ株主総会、我々も来年の 2 月とか 3 月が最初なので。どういうことになるかはわからないです、正直。

ぼく:そのへん不安はなかったの?

鎌形:実は僕たちより前に、同じく元楽天の方で、金田さんっていう方がファンディーノを使って資金調達をしていたんですよ。

ぼく:へぇ!その方はどういう事業を?

鎌形:外国人が日本に来たときのレストラン予約アプリです。ファンディーノを見てたときにその方を発見して、すぐ連絡して「どうでしたか?」といろいろ聞いて。

ぼく:なるほど。

鎌形:話を伺ったら、株主との個別の連絡はほぼないと。というのも、うちもそうなんですけど、エンジェル税制というのを適用できてるので、投資家も投資した金額を所得から控除できてるんですね。

ぼく:おおおおなるほど。なんなら 50 万円出してても、所得から 50 万円引かれて、実質ゼロ円で株主になれるみたいなもんなのか。

(※ちゃんと調べてないので、自己責任でお願いします)

鎌形:創業から 3 年以内とか、キャッシュフローが赤字とか、外部の大企業株主がいないとか、いくつか条件あって。エンジェル税制が適用できるというのは 1 つの大きな PR ポイントですね。

ぼく:全部の案件が適用されるわけじゃないのね。そりゃ適用される案件は人気になるわ。

鎌形:ファンディーノみたいなクラウドファンディングに限らずですが、シードから Series A ぐらいの会社って、確率的には将来 10 社に 1 社でも IPO して、10 社に 1 社 M&A で exit、とか出ればいいじゃない?ぐらいの感じだと思うんですよね。

ぼく:全部が全部は当然ながら当たらないね。

鎌形:それが節税にもなるってことであれば、あえて直接的な表現をすると、小金持ちな方からすると、ちょっと面白そうな企業があって、10 万円でいいから出してみて 10 万円所得控除されて、万が一うまくいったらリターンが出るならいいかな、っていう温度感の人が多いイメージです。

ぼく:すごい納得した。さっき言ったユニバーサルバンクの鳥居くんと話してて、彼もなんか温度感的には、今はお金を出したい人からの需要がすごい高いから、イケてる案件だったら数千万円ぐらいなら集められないことはないじゃないかみたいなことを言っていて。

鎌形:ふむふむ。

ぼく:肌感、スタートアップへの投資に興味あるとかいう人がいるのはわかるけど、そんな安くもない何十万円とかって金額出してくる人がそんないんの?っていう感じだったけど、節税文脈ならすげえ理解できる。ふるさと納税するのと一緒のノリだよね。

鎌形:返礼品のかわりがスタートアップの株式ですね。

ぼく:一応株主総会に参加する権利もあるし。なんかライブに関わってるっていうところで、そういうのをおもしろいって感じる人からすれば、ふるさと納税よりももしかしたら良いのかもしれない。

鎌形:面白がってる人はいるかもしれないですね。で、デメリットに戻ると、次のラウンド以降で VC とかが嫌がる可能性はもちろんあります。ここばっかりは本当に経験してないので、僕は何とも言えない...からやっちゃってるんですけど。

ぼく:そういう説明とかっていうのはファンディーノ側からはあったの?

鎌形:あんまりないですね。

ぼく:あんまりないんだ。

鎌形:そこは自分たちで調べたり...。ファンディーノ自体もまだ 3 年ぐらいの会社で、案件やり始めてからはまだ 1 年とかなので。

ぼく:そこで調達したところが次のラウンドでうまくいったとか失敗したとか、そういう事例がまだ十分でてきてない。

鎌形:ですね。可能性としては、もう 1 回またクラウドファンディングで個人から集めるか...。それか VC に対して「ゆうても 1 人当たり最大でも 50 万円分しか持ってないから決議権はないです、巨大エンジェルではなくてイチ個人がたくさんいるだけなので経営判断に影響はないです」っていうのを、僕は説明できるかなと思ってるんですね。


ぼく:あとは質問にもあったけど、反社とかが入ってないの?みたいなところのチェックだよね。さっきの話だと、ファンディーノの本人確認とかそのプロセスである程度は弾いてるはずっていうことなのかな。

鎌形:はい。そこはファンディーノが強調してて、事前の段階でしっかりとそこは見てますと。そもそもそういう人は入れない。だから唯一あり得るのが、あとから反社になっちゃったパターン。定期的にチェックしてるって言ってますけど、どういうプロセスかは知らないです。わかんないじゃないですか。そこのリスクはやっぱり多少ありますね。

ぼく:仮にそれが理由で上場できないというふうになったらそのときにもう個別対応するしかないのかな?

鎌形:そうですね。もうそこは起こり得る可能性と、今得られる金額っていうので天秤にかけて

ぼく:なるほどね。ちゃんとそのリスクは理解した上でやってるんだね。

鎌形:そうですね。やっぱり会社なんで。

ぼく:まあそりゃそうだよね。逆にクラウドファンディングで調達したことによるメリットとかは何かある?

鎌形:僕らの場合は、個人株主がワーッと集まったっていうことを営業に使えるんですよ。こんなにも支援を得られてますよって、我々のお客さんである化粧品メーカーに対する営業のときに。なんならクラウドファンディング見たっていう化粧品メーカーの方から、使いたいっていう問い合わせも来ました。

ぼく:へえええ。プロダクト作る系のクラウドファンディングとかでも、案件を立てること自体が PR・マーケティングに役立つとかって言うけど、それがあったんだ。

鎌形:まさにそこですね。あとは化粧品メーカーを顧客に持ってる広告代理店とか。web 系の方は見てたりしてるらしいので。


ぼく:ちなみに、例えば出資してくれてる人に対して、こっちから何かコミュニケーション取ることはできるの?例えば「今こういう事業を考えてて、こういう知り合いがいたら紹介してください」みたいなメッセージをそこに投げかけるとか。

鎌形:ファンディーナの管理画面が、こちらから発信できるプラットフォームになってます。ファンディーノのルールの 1 つとして、案件が成立したら毎月何か株主に対してレポートを出さないといけないんですよ。メルマガみたいな感じで。

ぼく:月次報告みたいなかんじか。

鎌形:はい、ただ数字じゃなくていいんです。今月こういうお客さん取れました、セミナーやります、人によっては「娘が順調に成長してます」とかっていう。なのでこちらから株主に発信できる場所はあるんですが、そこにまだ返信機能だったり、個別にコミュニケーションをとれるような機能はないですね。株主リストとして住所もメールアドレスも全部持ってるので、個別連絡はできますが。

ぼく:いわゆるエンジェル投資家みたいに「使う」のは難しいってことかな。投資してくれた人から何かしらのサポートを得ようみたいなのっていうのは、期待値としては元々そんなにないっていうことだよね。

鎌形:そうですね。顔も知らないし、本当に無機質な名簿でしかないので。投資してくださった方も、どういう熱量で投資されたのか、それこそただ単に節税になるからやったってだけなのか、積極的にサポートしたいって思ってるのかわかんないので。そこが違いますよね、エンジェルとは。

ぼく:逆に言うと、クラウドファンディングで資金調達するときのスタートアップ側の期待値としては、もうピュアにキャッシュ得られますと。あとは VC みたいに、償還期限があるから絶対いつまでにイグジットさせなきゃ、みたいな制約が生まれるわけでもないし。

鎌形:普通株式ですしね。

ぼく:優先株はないんだ。

鎌形:そこはまあこれからなのかな。わかんないです。結構いろいろ免許があるらしくて。ああいう公募形式でお金を集めますっていうのは、ファンディーノは普通株式ですね。年間 1 億円以下。

ぼく:1 人の投資家が出せるのは 1 案件あたり 1 年に 50 万円未満だっけ。

鎌形:そうです。

ぼく:実際やってみて、クラウドファンディングでの調達って、例えば後輩の起業家とかにはお勧めできる?条件によるって感じ?

鎌形:お勧めはできますけど、やっぱり 1-2 年事業をやって、実績がある程度出てきてからのほうが投資家を裏切らない形にはなるんじゃないかなと思います。アイディア段階でも、お金は集まるかもしれないですけど。

ぼく:KickStarter とかであるような、金集まったけどモノができませんでした、みたいになるリスクっていうのはあるもんね。

鎌形:深い関係のエンジェル投資家からの調達であれば、「すいませんでした、次頑張ります」と言えば理解してもらえるかもしれないですけど...100-200 人関係者がいたら、レピュテーションも良くないし、そういうリスクは多少あるかな。だから多少なりとも事業が動き始めて、売上の作り方・コストの掛け方がわかってきてからのほうがいいかなと思いますね。

ぼく:実際に 100 人以上から調達した側の視点だね。やっぱり168 人の名簿を前にして、責任みたいなものはちょっと感じた?

鎌形:そうですね。銀行口座に、今までとはケタ違いの金額がボンと入ってくるわけですからね。やっぱそれを見ると「やべぇ、ちゃんとやんなきゃ」って、すごい思いました。

ぼく:それにしても、株式型のクラウドファンディングって、メリット・デメリットで言えば、全てが明らかになったわけではないじゃん。可能性としては、すげえ高い打率で上場審査のときに反社・反市で弾かれちゃいましたとか、VC からの調達の打率が明らかに (そうじゃない場合と比べて) 低いですよみたいなのって、ここから出てくる可能性はあるじゃん。

鎌形:そうですね。

ぼく:にもかかわらずクラウドファンディングでやろうって踏み切ったのって結構すごいよね。

鎌形:そうですね。お金も多少あると良いなと思ったっていうのはあるんですけど、それが第一というよりは、やっぱり外部に支援者がいるっていうのが会社としてプラスになるだろうなっていう感覚はあって。そういう方達を集められたらおもしろいな、というのがありましたね。

ぼく:なるほど。ちょっとだけ「社会の公器」に近くなった、みたいな。

鎌形:ただ、デメリットももちろんあるので、そこは僕も共同創業者もそうですけど、ちょっと読み切れないリスクは、メリットと天秤にかけて、感覚的にではありますけど、メリットが上回るなら GO するっていう。可能性としては事業にブレーキがかかる展開もあり得るので。「投資家のなかに反社が 3 人ぐらいいますよ」みたいなこと言われたら終わりですからね。「誰や!?」みたいな。笑

ぼく:そういう意味で言うと、これまでのラウンドで VC がまだ入ってないから、最悪ダメで「あいたた」となるのは、今回出資した投資家と自分たちだけ、っていう感じだもんね。もちろん従業員なんかも含めたステークホルダーっていうのはいるけど、エクイティ的な意味でのリスクでいうと。

鎌形:そうですね。

ぼく:いざクラウドファンディングでお金を集めてるときのことをもっと聞きたいんだけど。案件が通って、翌日からページが公開だっけ。その翌日か翌々日ぐらいから申込受付を開始して、24 時間募集って感じだよね。その間って鎌形くんは何してるの?

鎌形:僕ですか?

ぼく:そう。だって、最初のほうに言っていた投資家としての審査とか登録があるから、案件が公開されても、既にファンディーノに登録してる人以外は投資できないわけやん。あんまりマーケティング的な努力、たとえば SNS での拡散とか頑張っても仕方がないわけよね。

鎌形:そうですね。自分たちの Facebook で告知する以外には、達夫さんにお願いしたぐらいです。笑

ぼく:どれぐらい効果あるのかよくわからんな、みたいな状態で。笑

鎌形:ですね。告知を見てからだと遅いわけなので。1 件、実は会社に連絡があって、「投資したいんですが、ファンディーノで投資家登記してないです」って。「こういうプロセスをすれば、書類を受け取って投資家登録できますけど、間に合うかはわかりません」ってご説明しました。

ぼく:そこはファンディーノ側のマターだから。

鎌形:ですね。あと郵便局の壁を越えれないので。書類、在宅で受け取らないといけないんで。

ぼく:あぁ、本人確認でね。ある意味、しっかり投資家側の審査をしてるっていうことだから、ポジティブではあるけどね。

鎌形:なので集客のところは、一応やれることはやったけど、実質的にはファンディーノの集客力に任せてた形です。準備期間が 1 週間もあったら、さすがに自分たちもウェブマーケティングの会社なので、広告出したりとかアクションとれたんですが。

ぼく:その期間のところはコントロールできなかったの?

鎌形:言えばできたのかもしれないですね。次やる機会があったら、します。

ぼく:集まったから良かったものの。

鎌形:うち結構ファンディーノの中では小さい案件だったので、比較的集まりやすいだろう、多分集まるだろうなって思ってたんです。ただ、もし次 2 倍の規模でやるってなったら、「ちゃんと告知したいので 1 週間前に案件オープンしてください」っていうのは言うかもしれないですね。

ぼく:なるほど、さっき 3,000-6,000 万円ぐらいがボリュームゾーンって言ってたもんね。

鎌形:ちょっと話題変わりますが、僕と同僚とで、ファンディーノはじめ株式型クラウドファンディングのサービスのことを話したことがあるんですよ。ビジネスモデルとか。その中で、「このファンディーノって会社は、継続するのかね?」って議論になったことがあって。

ぼく:ほう。その理由は?

鎌形:収益源が「成立した案件の 20%」だけなんですよね、基本。

ぼく:あぁ。ってことは 1 回取ったら、同じ案件からはそのあと売上たたないよね。

鎌形:1 年後から月 5 万円の管理費用、っていうのは一応あります。それで管理画面を使えたり。

ぼく:流行りの B2B SaaS じゃないですか。

鎌形:でも 1 社から 5 万円とったところで、ファンディーノは証券業の免許を取ってるので、会計士はじめ士業の方中心に 20 人ぐらい社員?がいるんですよ。

ぼく:そうなのね。始まったばかりなのに結構大所帯。

鎌形:なのでそれなりのコストをかけて運営してる会社で、決算発表もされてますけど、まだまだこれからの事業なんですよね。それで、これからいろんな企業が同様の株式型クラウドファンディングのサービスを始めてくると、絶対どこかで差別化が必要になってくるじゃないですか。

ぼく:そだねー。

鎌形:ってなってきたときに、ファンディーノがもしかしたら 5 年後なくなってるかもしれない、って可能性の議論をしたことがあります。

ぼく:ファンディーノはこの株式型クラウドファンディングだけをやってる会社?

鎌形:です。日本クラウドキャピタルって会社です。ただ仮にそうなったとしても、会社と個人株主の間での投資契約でしかないので、我々の事業運営上特に問題があるわけではないんですけどね。

ぼく:株主への連絡や管理とかを自分たちでやる方法を考えなきゃいけないんだけで。

鎌形:っていうのを考えると、今キャッシュが入る可能性があって、デメリット・メリット比べてもやったほうがいいと思うなら、もしかしたら今やっちゃったほうがいいかもしれない、って話を経営陣でしたんですよ。

ぼく:あー。2-3 年後同じことをやろうと思っても、状況変わっててできないかもしれない、って考えたわけだ。

鎌形:新しい規制が出来たりとかもするかもしれないですし。

ぼく:変わるもんね、金融の世界は。あとは、鎌形くんの会社もエンジェル税制の対象じゃなくなるし。

鎌形:ですです。あと投資家からすると、別にどのプラットフォームで登録して投資してもいいわけじゃないですか。

ぼく:そうだよね。積極的な人はたぶん複数しているんじゃないかね。

鎌形:ってなると、どこのプラットフォームにおもしろい案件があるか、っていうところがプラットフォーム間での競争優位になってくるんじゃないかと仮説を立てて。そうすると案件の取り合いになって、じゃあ手数料も下げて、ってなってくのかなあ。

ぼく:プラットフォーム側が、イケてる案件だけを集めて、グロースさせるところまでサポートする、とかできればカッコいいけどね。

鎌形:それができれば全然違いますね。

ぼく:投資家は質がいい案件が集まるところで投資したい、起業家の側はとりあえず第一にお金が集まるところに出したい。なので、イケてないと判断されたプラットフォームは、投資家が集まらず、結果として案件が集まらなくなっていく、と。

鎌形:Twitter とかブログとかを見てると、投資家の方の中には、ファンディーノ側に求めることとして、新規の案件はともかく、成立済の案件をもっと育てる動きを見せてほしいっていう方も、チョコチョコいるんですよね。

ぼく:「俺が投資したところどうなってんねん」と。でもそれやり出すと、ビジネスモデル的には 1 回終わってる案件なわけで。資金を集めるところをサポートして、そこから 20% もらうっていうのが既に終わっていて、そこから先のグロースのところで、自分たちには売上としては何も入ってこないんだけど、投資家へのサービスとか差別化として求められてはいると。確かにモデルきついね。

鎌形:インセンティブが合わないですよね。株式の一部でもファンディーノが持ってれば別ですけど。

ぼく:だね。もしくは、最初に集めた 20% が、その後 5 年なのか 10 年なのかのグロースをサポートするコストも含んだものなのであれば。今日の鎌形くんの話聞いてると、そもそも資料を作ったりとかデューデリしたりみたいなところのコストがすでに。

鎌形:すごいコストだと思います。僕たちとしては有難い。

ぼく:2,500 万円調達したとき、20% で 500 万円がファンディーノの取り分でしょう。手間かけてるわりに、そんなに高利益じゃないような気がしてきた。

鎌形: だって 2018 年の 10 月に成立した案件うちだけですからね。で 20 人ぐらいの士業の方を抱えてるんですよ。ちょっと厳しいですよね。


ぼく:鎌形くんのところには、500 万円引かれた 2,000 万円が入ってくる感じ?

鎌形:入金されてから払うんですよ。2,500 万円が 1 回入ってきて。

ぼく:2,500 万円は 1 回資本として増えて、費用としてそこから 500 万円が計上される、みたいな。

鎌形:費用も「資本金を獲得するための費用」って 3 年で減価償却できるんですよ。

ぼく:じゃあ P/L 上は、500 ÷ 36 で毎月 10 万ちょいぐらいずつ費用計上される感じなんだ。

鎌形:そうです。それもファンディーノの会計士に教えてもらいました。2,500 万円入ってきて 500 万円払うって不思議な感覚でしたね。500 万円一括で払うことってあんまりないから。

ぼく:おもしろいね。今後どうなっていくのやら。

鎌形:あの業界がどうなるかっていうことは考えちゃいます。でも個人投資家の人たちには、ファンディーノの方も言ってましたけど、お金は多少余ってるような感覚はあります。だからタイミング良かったのかなと。

ぼく:いい案件があれば出したいと。わかる気がする。

鎌形:でもさすがにドキドキはしましたね。日曜の 19 時スタートだったんですよ、投資の受付。

ぼく:サザエさんとちびまる子ちゃんが終わったぐらいの時間。

鎌形:はい。パソコン見てました、ずっと。リアルタイムでカウントアップされていくんで。幸いにも集まったから良かったですけどね。翌日に持ち越したりなんかしたら、心が持たなかったと思います。

ぼく:確かにね。日曜日の夜じゅうに集まったの?

鎌形:最低成立価格の 1,000 万円は 3 分、満額の 2,500 万円は 30 分で。

ぼく:マジ!?じゃあもう、告知から応募開始のときまで、投資家さんたちは待ち構えてたんだ。

鎌形:待ってたみたいです、パソコンの前で。19 時半に集まったんで、安心して、19 時 45 分に地元の中華食べに行きました。

ぼく:そんな勢いで集まるんだね。

鎌形:ですね。キャンセル待ちも結構入って。

ぼく:キャンセルっていうのもあるんだ。

鎌形:1 週間ぐらいキャンセル期間で。

ぼく:入金するまでのタイムラグでもあるのかな。

鎌形:キャンセルも多少出てたと思いますけど、幸いキャンセル待ちが多くいたおかげで。

ぼく:また埋まって。

鎌形:はい、無事に満額決まりました。入金がない人も中にはいるんですって。その場合って、ファンディーナはそういう人をプラットフォームから弾いちゃうらしいんですよ。

ぼく:まぁ実際期限内に入金しないのは無しだよね。

鎌形:我々の場合は 100% ちゃんと入金があったので、よかったですね。普通にウェブサービス作ること考えると、160 人から入金を受けることになって、1 人もミスんないってまず考えられないじゃないですか。

ぼく:そんだけ投資意欲が高いんだね。

鎌形:高いんじゃないですかね。あと、ファンディーノ出禁になりたくないというのもあるんでしょうし。

ぼく:逆に言うと、それなりにイケてる案件で、さらにエンジェル税制も対象ですってなったら、案件として投げればわりと望みの金額は集められちゃうのかもしれないね。

鎌形:かもしれないですね。これはファンディーノも公開してますけど、投資家は 9 割 5 分男性らしいです。だから、うちの「化粧品事業」っていうものに OK サインを出すかは、ファンディーノも最後まで迷ってました。「ピンと来るかな、男性には」って。

ぼく:ほぼ男性なんだね。

鎌形:だから我々も、化粧品でどうこうっていうよりは、募集内容を「アジアの女性をデータベース化して、マーケティングに使っていく、マーケティングカンパニーになります」っていうメッセージに変えたりしました。多少、男性向けにわかるような内容にしなきゃと思って。

ぼく: 確かに、女性向けのマーケティングとかだったら、わかるかもしれない。化粧品とかって言われると、やっぱピンと来ない。

鎌形:ですね。化粧品マッチングさせますよ、みたいのだと全然興味ないでしょうし、わかんないです。それはもうその場に応じて。

ぼく:なるほど。よくわかりました、長い時間お話聞かせてもらってありがとうございました!


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株式会社プラネティア 代表取締役 鎌形より

「今回の資金調達、弊社の事業に共感いただいた 168 名の株主と、FUNDINNO 側で調達実現に向け全力でサポートいただいた関係者の皆様、本当にありがとうございました。

 これを機に、来年はより飛躍の年として、アジアの女性、そして日本のお客様に喜んでいただけるサービスを作って参ります。

 これからも引き続きよろしくお願い致します。

 P.S. 達夫さん、本記事の為にお時間頂戴しましてありがとうございます!

 次回うちが募集する際は達夫さんもエンジェルとして是非!!」
 

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Q

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