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2016年1月25日月曜日

アプリを広告出稿するときのCPIは「高い」ほうが良い理由



えっ CPI は安いほうが良いでしょ!?
って思った方は続きを読んでください。

CPI = Cost Per Install = アプリをユーザーに 1 回インストールさせるためにかかる費用

CPI は安いほうがいい - それは「全てのインストールの価値が同じ」である場合に限られる。

「全てのインストールの価値が同じである」とは、例えば課金があるアプリの場合「全てのユーザーが同様に課金をする」ということ。

例えば、全てのユーザーが
  • 1 ヶ月目 : 300 円
  • 2 ヶ月目 : 200 円
  • 3 ヶ月目 : 100 円
  • それ以降 : 90 円、 80 円... と逓減
と課金したとする。
(プラットフォーム手数料は無視)

この場合は、回収までにかかる期間は
  • CPI 600 円のとき : 3 ヶ月
  • CPI 500 円のとき : 2 ヶ月
  • CPI 300 円のとき : 1 ヶ月
となり、それ以降の売上は利益になる。

この場合はキャッシュフローの観点から、「CPI は安ければ安いほど良い」というのは正しい。

さて、ここで問題となるのが「全てのインストールの価値が同じ」というのは正しいか? という点だ。
ひとことで言うと、この前提は正しくない。

課金率が平均で数% 〜 十数% 程度であるというのは昔から言われていることだし、数字をよく知っている方なら、いかに多くの売上がごくごく一部の限られたユーザーから上がっているかというのをご存知だと思う。

さらには課金までいく前の段階で、継続率という指標を見たことがある方なら、そもそも半数前後のユーザーがインストール後 1 日でアプリを使わなくなっているという (知らない方には衝撃の?) 事実をご存知だろう。

  • 半数近くのユーザーがインストール後すぐに離脱
  • そこから課金にいたるユーザーはさらにごく一部

にも関わらず日本の多くの企業ではいまだに、
  1. まず「平均 LTV」が計算され
  2. 「LTV > CPI」に収まるように低い CPI が目標として設定され
  3. その CPI に収まっていればあとはインストール数をできるだけ多く稼ぐ
というマーケティングが行われている。

実際には、その低い CPI で獲得したユーザーのほとんどが売上に繋がっていないことも多いのに...




では、海外や日本で、先進的なアプリ企業はどのようなマーケティングを行っているのか?
精緻なデータ分析に基づいた投資回収だ。

先ほど「全てのインストールの価値が同じ」では無い、ということを書いた。
なのでまずは、インストールの価値を分析するところから始める。

広告ネットワーク A から獲得したユーザーは何ヶ月で幾らの売上になっているのか。
広告ネットワーク B から獲得したユーザーはどうか。
SNS から獲得したユーザー、オーガニックで流入したユーザーについてはどうか。

(さらには、多数の配信面の 1 つ 1 つについて、インストール後の売上まで追える広告ネットワークなんてものも存在するらしい... どこの AppLovin か知らないが、素晴らしい)

そうすると、例えば広告ネットワーク A から獲得したユーザーが B から獲得したユーザーよりも、同じ期間で 2 倍課金してくれる、といったことが分かる。

その場合、あなたが広告主だったとして、両方の広告ネットワークに同じインストール単価で出稿しようと思うだろうか?
当然ながら、B に対しては A の半分の単価で出稿しようと思うはずだ。

ただこれだと、価格は下方圧力しかかからない。
面白いのはこれからだ。

例えば、ある広告ネットワークから獲得したユーザーが
  • 1 ヶ月目 : 300 円
  • 2 ヶ月目 : 200 円
  • 3 ヶ月目 : 100 円
というペースで課金してくれたとする。
キャッシュフロー的な理由で、2 ヶ月で投資回収したいというのが会社のゴールなので、CPI は 500 円にしようと決まる。

すると 3 ヶ月で利益は 100 円、投資回収率は 2 ヶ月で 100% (500/500)、3 ヶ月で 120% (600/500) だ。

この投資回収率のことを、広告の文脈では ROAS = Return On Ad Spend という

ここで考えてみてほしい。
アプリ企業として成長するために必要なことは何か? - 利益を上げることだ。

500 円を投資して、3 ヶ月で 100 円の利益を上げるより、
5 万円を投資して、3 ヶ月で 1 万円の利益を上げたほうが良いし、
5 億円を投資して、3 ヶ月で 1 億円の利益を上げたほうがもっと良い。

(回収までのキャッシュフローのマイナスに耐えられるのであれば)

なので ROAS の水準を高く保った上で、広告出稿の金額を伸ばせるだけ伸ばすというのが、ビジネス上正しいマーケティングだ。

じゃあどうやって出稿金額を伸ばすのかというと、
  1. CPI を現在の水準にキープしたまま、件数を増やす
  2. CPI を上げる (その分、課金金額も伸びないといけない)
という 2 つのアプローチがある。

1. が出来るのであれば良いのだが、実際にはなかなか難しい。
当然ながら他の広告主 (あなたの競合) もユーザーを獲得したいと思っており、広告を配信できる供給量 (総在庫 = 表示回数の上限) が決まっている以上、需要が高まれば (価格を上げない限り) 件数を増やすのには限界があるのだ。

一方 2. については、さらっと書いたカッコ内の前提が非常に難しい。
単純に CPI を上げることは出来るが、闇雲に全ての媒体・メディアで CPI を上げてしまうと、当然ながら ROAS が悪化してしまうからだ。

が、透明性の高い広告プラットフォームと、インストールから先の成果指標を追える分析ツール (SDK) を実装していれば、下記のような最適化が可能だ。

  1. 配信先のメディアごとの課金状況と ROAS パフォーマンスをリアルタイムで把握
  2. 目標の ROAS に対して +50% 達成できているメディアに対しては、CPI の目標を +50% 上げる
    • ROAS は当初目標をキープしたまま、配信ボリュームを伸ばせる
      (競合案件に対して価格で競り勝てるため)
  3.  目標の ROAS より ▲30% で未達のメディアに対しては、CPI の目標を ▲30% 下げる
    • ボリュームは減るがゼロにはならず、ROAS を当初目標に合わせられる
  4. 結果、課金が多くあがる (相性が良い) メディアから高い CPI で多くのボリュームを獲得できる

これこそが「インストール後のデータを活用したマーケティング」であり、「トラッキングツールではなくアナリティクスツールが求められている」理由である。

逆に競合となる広告主がこの方法で配信している場合、低い CPI で固定して配信を続けることは大きなリスクになる。

競合が ROAS が良いメディアをきちんと判別できていて (上記の 1. のプロセス)、CPI 800円で配信していたとする (2. のプロセス)。
自分はその判別が出来ていないため、その媒体にも CPI 500円で配信しようとする。
すると、そのメディアでは impression が中々とれない。

そうすると、自分が広告を配信できる先のメディアは主に、競合が「ここは ROAS が悪いから CPI 300円に下げよう」とか判断した質の悪いメディアに限られる。
結果として、CPI は確かに 500 円をキープできるが、売上があがらず投資対効果で競合に負け、ビジネスを成長させることが出来ない (少なくとも、広告をドライバーにして) ことになってしまう。

SmartNews Ad の blog「アプリマーケティングの2016年」という記事で
"課金eventをpost backしてROIベースでの運用を行うAppLovinのような取り組み"
とサラッと 1 行で書かれていた内容、きちんと文字にするとこんなに長く、深いのだよワトソン君。



というわけでそろそろマトメに入ろうと思う。

アプリのマーケティングに関わってる皆さんは今後、
  • ユーザーの流入経路ごとに ROAS を追えていない方は、良い広告効果測定・分析 SDK をきちんと実装するところから始めましょう
  • とりあえず自分の関わっているタイトルが、何日で何パーセントの ROAS を達成できていれば良くて、何ヶ月で投資回収するのが目的なのかを理解しましょう
  • 予算をどこにいくら配分するか、ではなく、回収が良い媒体には上限なしで突っ込む、ぐらいの気概を持ちましょう (それにエクスタシーを感じましょう)
  • クライアントや上司に「CPI が高い」と文句を言われたら、「お言葉ですが!」と上記ロジックで反論できるようになりましょう

コレが出来るようになると、データとしては極めて精緻に、でも圧倒的に大きい予算を回してより大きな成果を上げられるようになるので、マーケティングがめちゃくちゃ楽しくなること請け合いです。

個人的には、投資銀行でトレーディングとかアナリストやってる人がアプリマーケティングの業界に入ってくるようになると (そういう土壌が整備されてくると)、とっても面白いなぁと思う。

Q